大判例

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福井地方裁判所 昭和27年(行モ)1号 決定

申立人は、被申立人が申立外福映株式会社(以下福映という)に対し県税滞納にもとずき別紙目録記載の物件になした公売処分の執行は、当庁昭和二十七年(行)第三号滞納処分に基く差押解除請求事件の本案判決あるまでこれを停止するとの決定を求め、その理由として、申立人は昭和二十五年九月二十二日、別紙目録記載の物件につき、(イ)売買代金は金二百万円、(ロ)右物件につき五日以内に登記手続をすること、(ハ)福映が昭和二十七年九月二十一日までに申立人の福映に対する白井公証人作成の特第三一一五号動産及不動産賃貸契約公正証書にもとずく賃料を完済し、且つ前掲代金に五分を加えた金額を支払つた場合は申立人は福映に右物件を売戻すこと、(ニ)申立人は右買戻特約の期間中は右物件を他に売買譲渡処分をしないこと、を約してこれを福映から買受け、昭和二十五年十月二十五日、所有権取得の仮登記をしたところが被申立人は昭和二十六年十二月十日、右福映に対する県税滞納処分として右物件に対して差押をなし、同月十五日差押登記を経由した上、昭和二十七年九月八日附で右物件の公売期日を同月十八日と指定した旨通知してきた。

よつて申立人は被申立人に対し右公売処分に対する異議の申立をしたが右公売期日が切迫して通知されたため審査を経る余裕がなく、且つ手続進行により著しい損害を生ずる恐があるので右異議申立に対し裁決を経るに先ち、右滞納処分にもとずく差押解除請求訴訟を提起したのであるが、右期日に公売処分が終了すると買受人が右物件に賃貸借契約を締結する等の処分行為をすることが考えられ、申立人に償うことのできない損害が生ずるのでこれを避けるため右公売処分の執行を停止する必要があると述べ、疏明として甲第一乃至第五号証を提出した。

よつて被申立人の意見を聞いたところ、被申立人は申立人の本件物件の所有権を否認しているので、申立人が右売買契約にものずき被申立人に本件物件の所有権の移転を対抗するには登記を必要とするところ、申立人自ら主張するとおり本件物件には仮登記がなされているに過ぎないのである。凡そ仮登記は本登記の申請に必要なる手続上の条件が具備しないか、又は不動産物件の変動を目的とする請求権を保全するためになされるもので、本登記が後日なされたときにその順位を仮登記のときに遡つて保全する効力を有し、仮登記のみで第三者に対抗することはできないものと解するから、仮りに申立人主張のとおり右売買契約によつて所有権が申立人に移転したとしても申立人はその所有権取得をもつて被申立人に対抗し得ないこと明らかである。従つて本登記がなされない以上、本件物件の所有権が申立人にあることを前提として被申立人のなした福映に対する県税滞納処分にもとずく差押処分の解除の請求が認められ、且つ本件公売処分が取消される可能性は極めて少いものと思料する。よつて爾余の判断をなすまでもなく申立人の本件公売処分の執行の停止を求める申立は理由がないのでこれを却下し、申立費用については民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり決定した。

(裁判官 吉田彰 山田正武 島原清)

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